【怖い話30】お客様アンケート

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アンケート 心霊系の怖い話

客室設置のアンケート

 まだホテルのフロントマンとして働いていた頃の話。

 私が働いていたのは安さが売りの家族客向けのホテル。ファミリー層をターゲットにした安さを売りにするという狙いがヒットし、田舎の山の中腹にあるホテルにしては繁盛しており特に週末はお客様が多かった。

 夕方前にはチェックイン受付のお客様でフロントはごった返し、朝はチェックアウトのお客様でさながら戦場と化す。

視世陽木
視世陽木

またのお越しをお待ちしております。……次にお待ちのお客様どうぞー!

 昨今の新型感染症の影すらなかった当時、朝から大きな声を張り上げて100組前後のチェックアウト業務をこなしていた。

主任
主任

視世くん、レジ金の計算が終わったらお客様アンケートも一緒に持って行ってくれない?

 全組のチェックアウトが終わってレジ金のチェックをしていると、主任からアンケート整理をお願いされた。お客様に記入してもらったアンケートをまとめて、支配人に渡す前に軽く目を通しておく仕事だ。フロントに訴えるほどじゃないけど気になったことなどが記入されていることが多いため、支配人に渡す前に目を通し、自分達で問題点や解決策を考えるという意図があった。

視世陽木
視世陽木

わかりました。回収が終わってる分は全部まとめて出しときますね。

 了承の旨を伝えてアンケートに目を通すと、『いいホテルでした。また来させていただきます。』というような喜ばしい内容もあれば、『夜のバイキングが混み合ってて楽しめなかった。』といった改善すべき内容も書かれている。

 忙しい業務の合間、お客様アンケートに目を通すのはささやかな楽しみだった。

 あの日までは……

夜に響く声

視世陽木
視世陽木

うわっ……

 ある日、いつものように回収したアンケートを読んでいると、思わず声を漏らしてしまった。同時に、「ついに来たか……」と苦笑いした。

 客室に設置してあるアンケートは、様々な項目を5段階で評価してもらい、最後に自由記入欄があるといった一般的なもの。

 問題のアンケートも評価項目は普通に5段階で評価されていたのだが、自由記入欄に書かれていたお客様からの一言が問題だった

………

【最後にお客様のご感想をお聞かせください】
● お部屋番号( 503 )号室
バイキングの食事内容が素晴らしく、味もよかったです。お部屋もきれいで満足でしたが、夜に枕元に知らない人が立っていました

 部屋番号は仮の番号とするが、そのホテルでは「503号室には何かいる」という噂がまことしやかに囁かれていた

 客室清スタッフからも話を聞いたことがあった。

清掃スタッフ
清掃スタッフ

誰かといる時はないけど、1人で掃除してると人の気配がする。

清掃スタッフ
清掃スタッフ

並べて配置したはずの座布団が、ちょっと目を話した隙にズレていた。

 私自身が何かを視たり聴いたりしたことはなかったが、チェックアウト後の忘れ物チェックで客室を回る際、503号室の空気感が他の部屋とは違うように思えたことが多々あった。

無言のチェックアウト

 支配人に届ける前に主任に報告したのだが、主任との会話の中でさらに恐怖を煽る事実に気づいてしまった。

主任
主任

そのお客様のチェックアウト、視世くんがしたのよね?

 伝票を再チェックしたが、確かに私がチェックアウト対応していた。

主任
主任

何か言ってなかったの?

視世陽木
視世陽木

特に何も……

 503号室に宿泊したお客様は、夜に枕元に知らない人が立っているという経験をしたにも関わらず、アンケートに短い一文を残すだけ無言で帰っていったのだ。

 もしも枕元に立っていたのが人間だった場合、ホテルのセキュリティ問題になってくる。お客様の所持品や所持金が無事ではないだろうし、最悪の場合は命の危機さえ考えられる。

 しかし無言でチェックアウトしたということは、窃盗等の被害はなかったのだろう。

 ということは、枕元に立っていた存在は人間ではないナニカということになるのではないだろうか?

視世陽木
視世陽木

たぶん宿泊したお客様もわかってたんだろうな……

 フロントに言ってどうなる問題でもないが、言わずにはおれずにアンケートに一文添えることにしたのではないかと推測した。

 ちなみにアンケートだが、主任が支配人に報告して話し合いがもたれたらしい。

話し合いの末に「申し出なかったのは事を荒立てたくなかったからではないか? もし今後お客様から連絡があるまではこちらから触れるのはやめておこう」という結論に至った。

 今はどうなったかわからないが、私が退職するまでの間に503号室に宿泊したお客様からの連絡はなかった。

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