【怖い話38】条件次第で事故物件

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心霊系の怖い話

長い前置き

 不動産屋で働く友人から聞いた話だ。

友人
友人

うちの会社は事故物件は別のリストになってたよ。

 他の不動産屋はどうか知らないけど、と前置きして話した内容は、なかなかショッキングながらも理にかなった理由だった。

 お客様の前でペラペラとページをめくっている時に、うっかり『心理的瑕疵あり!』などという文字が出てこないための配慮だと言った。

 事故物件や訳あり物件は相場より家賃を下げていることが多いので、一般的な物件探しの条件には当てはまらないことが多い。これは、家を探す人に「家賃が安すぎるところはヤバい」という認識が広まったからだ。

友人
友人

少しでも家賃が安いと、何もない物件でも疑われることがあるんだよ。

 今ではインターネットで気軽に情報検索ができるため、自分の希望する物件の家賃相場を調べてくる人が多くなり、何でもない物件でも家賃のことで突っ込まれる機会が増えたという。

友人
友人

事故物件だからって、必ずしも家賃を下げなきゃいけないわけでもないしな。

 事故物件でも気にしないという人もいるし、交通の便等の立地条件が良い場所は、事故物件だったとしてもすぐに入居者が決まることが多いらしい。

友人
友人

話は戻るけど、事故物件のリストの中にちょっと特殊な事故物件があったんだよ。

 長すぎる前置きが終わり、ようやく本題に入った。

悲しき事情

友人
友人

ネグレクト(育児怠慢、育児放棄)で子どもが亡くなった物件だった。

 事件や不慮の事故で人が亡くなったとしても、すべての件が報道されるわけではない。

世の中の情勢やその日のニュースの多さによっては、よほど凄惨で残忍な事件や、よほど話題性が見込めるものでない限り、大々的に報道されなかったりする。

 余談だが、今後も解消されることがないであろう報道の闇である。

尊い命が失われた事件・事故よりも、芸能人の不倫や不祥事の方が大きく報道されることに意味はあるのだろうか?

 閑話休題。

視世陽木
視世陽木

悲しい事件だけど、何が特殊だったんだ?

 とても残念なことであるが、このご時世、小さな子どもが亡くなったという話は耳にすることが多い。

友人
友人

家賃の下げ幅が他の事故物件より小さいし、過去の入居者さんからのクレームもほとんどないんだよ。

視世陽木
視世陽木

お前もさっき言ってたけど、家賃は絶対に大幅に下げないといけないわけじゃないんだろ?

 それに、事故物件だからといって必ず何かが起こるわけでもない。

友人
友人

そりゃそうなんだけど、普通の家賃相場とほぼ変わらないから、気になって先輩に聞いたんだよ。

衝撃の事実

 先輩から聞いた内容は、驚くべきものだった。

友人
友人

キッチンにある床下収納を使わなければ、何でもない普通の家なんだって。

 先輩いわく、開けっ放しにしなければいいらしく、物の取り出しや収納のための短い開け閉めは問題ないのだという。

先輩も「俺も先輩から聞いただけだけどな」と言っており、先輩の先輩はすでに退職しているため、それ以上詳しい話はわからないらしい。

視世陽木
視世陽木

つまり、床下収納がその物件を事故物件たらしめてるってことか。

確かに特殊な条件で、奇妙な話だ。

※ イメージ
視世陽木
視世陽木

なんで床下収納なの?

 話の奇妙さを噛みしめているうちに浮かんだ疑問に、友人は顔を曇らせながら答えた。

友人
友人

床下収納に子どもを閉じ込めたらしくて、そこで亡くなったらしいんだ……

 一瞬で胸が詰まった。

友人
友人

オーナーさんが手配して、霊能力者に視てもらったことがあるんだって。

 霊能力者が霊視した結果、狭い床下収納に閉じ込められて亡くなった子どもの霊がいるのだという。

小さく非力な子ども故に脱出叶わず亡くなってしまったため、霊になってからも出られないのではないか、ということだった。

視世陽木
視世陽木

床下収納って、あれば便利だけど、ないならないでいいもんな。

話された衝撃の事実があまりに悲しかったため、話を少し転換させるように言った。

友人
友人

そうなんだよな。

友人が勤める不動産屋もそう判断したようで、事故物件なので家賃を下げるというより、床下収納があるのに使えないことに対して家賃を下げた、という体らしい。

 床下収納を使うにしろ、扉を開けっぱなしにする人は少ない。

日常生活でほとんど差し支えがないからこそ特殊な事故物件として扱われてるのだろう。

クレーム

友人
友人

過去の入居者さんで「そんな話は信じない!」っていう人がいたらしいんだよ。

視世陽木
視世陽木

へぇ。どうなったの?

友人
友人

収納してた食品が悪くなるのが早かったんだって。

 もちろん床下収納の扉を開けっ放しにすることはなかったが、未開封にも関わらず傷むのが早かったらしい。当然賞味期限や消費期限には問題がないものばかりだ。

友人
友人

最初は「床下収納の気密性が悪い!」ってクレームだったらしい。

 事故物件としてのクレームではなく、保存していた物の劣化が早いことによる床下収納の機能性に関するクレームだったという。

視世陽木
視世陽木

言いがかりみたいなもんだろ?

友人
友人

そうなんだよ。

 床下収納で子どもが亡くなったため、床下収納自体まるまる新しいものに取り換えているのだ。

なぜ床下収納を潰してしまわなかったのかは謎だが、新しい物になっているのなら気密性や保温性などは向上しているはず。

友人
友人

しょうがなく再取り換えしたけど、結果は同じだったってさ。

 取り換え後にも同じ現象が発生したことにようやく薄気味悪さを感じ、早々に退去したのだという。

友人
友人

事件のことを知っている人は近所にも少ないみたいで、意外とすぐ入居者が決まるんだよ。

友人は最後に一言そう述べて、話を終わらせた。

 現代では、家族なのに互いへの関心が薄かったり、ご近所さんとの関係が希薄であることも珍しくない。

事実が語り継がれていた一昔前とは違うため、事故物件はひっそりと増えていくのかもしれない。

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