霊感チェックの注意点
世の中には霊感チェックなるものがある。
その名のとおり、霊感の有無をチェックするテストのようなものだ。
インターネットが広く普及し始めてから、わりとメジャーになったのではないだろうか?
詳しい内容までは知らなくとも、霊感チェックができるテストがあるのは何となく知っている人も多いと思う。
実際に検索エンジンに『霊感チェック』と入力すると、その手のサイトが数えきれないほど出てくる。
しかしこの霊感チェックテスト、内容ややり方によってはまったく無意味だったり、そもそも信憑性がなかったりするので注意が必要だ。
単純な話、「これは霊感チェックテストだ」という先入観がある時点で信憑性に乏しくなってしまう。
実際にいくつかのサイトを覗いてみたので、記載のあった質問項目を引用させてもらう。
【設問】
・どちらかというと、音や匂いに敏感に反応する方である。
霊感チェックテストだと知っていてこんな設問があると、どうしても「霊の存在に敏感かどうかを確かめたいんでしょ?」と思えてしまうのだ。
怖がりで自分に霊感がないと思い込みたい人がこの設問を見たら、「音や匂いに敏感だけど、そう答えたら霊感がある可能性が高まるんじゃ?」と考え、反対の答えを言ってしまうかもしれない。
逆に、お調子者や人気者になりたい人がやった場合、「別に敏感じゃないけど、敏感だって答えた方が霊感があるってなって注目されそうだな」などと考えてしまうかもしれない。
あくまでちょっとした質問ぐらいな感じで「そういえば音とか匂いとかに敏感な方?」とサラッと聞いた方が、「いや、そうでもないかな。」「うん、敏感な方だね。」と、本当のことを答えるだろう。
ネットなどで調べてやる場合には難しいが、飲み会の余興的な感じでやるのであれば、「心理テストしまーす!」ぐらいな感じに留めておき、霊感の有無を調べる、というところは隠さなければならない。
視世の霊感
前置きが長くなってしまったが、今回の話は霊感チェックテストにまつわる話だ。
霊感チェックテストがまだ一般的ではなかった、大学生の頃の出来事である。
視世先輩、心理テストやりません?
ある日のサークルの部室にて、心理学を専攻している後輩が話しかけてきた。
いいよ~。
何も考えずに能天気に返事する私。
信じる信じないは別として、私は占いや心理テストなどが大好きである。
占いの結果は信じないことも多いくせに、タロットカードを購入して勉強するぐらいには占いが好きだ。
すでにテスト済だったのか、他に何名かいた後輩達が興味深そうに様子をうかがっていた。
目をつぶって、私が今から言うことを頭の中で想像してください。
わかった。
後輩の話をまとめると以下の通りだ。
言われたとおりに頭の中で想像する。
住んでいた実家はそんな広い家ではないのですぐに終わった。
終わったよ。
目を開けてそう告げると、後輩が質問してきた。
家の中を歩いている最中、誰かいたり、すれ違ったりしませんでしたか?
私は質問に正直に答えた。
誰かいたってわけじゃないけど、階段を上がった時にスッと影とすれ違ったな。
嘘や冗談ではなく、紛れもない事実だった。
私の返答を聞いた後輩達は、「マジかよ……」「やっぱり……」「こわっ……」などと口々に囁きあっていた。
よく見ると、出題者である後輩も若干引き気味だった。
これ、何のテストなの?
後輩達の様子がおかしいので尋ねてみると、後輩が自白のような感じで呟いた。
霊感チェックテストです。
当時の私は霊感チェックテストなど知らなかったため、詳しく聞かせてもらった。
後輩いわく、想像で家の中を歩き回っている途中、知らない人がいたり、人や影とすれ違ったりした場合、その人は霊感がある可能性が高いのだという。
もしくは家のその場所に霊がいる可能性が高い、とも言っていた。
紹介しているサイトによっては、たとえ想像に出てきたのが家族や知人であっても、想像する必要がないものを想像してしまったということで、霊感ありと診断することもあるようだ。
霊感というもの自体が非科学的なものなので、信憑性を求めるのは酷だろうが、サイトによって内容や診断基準が違うのはいかがなものかと思う。
話が一段落つくと、居合わせた後輩の1人が「視世先輩、このテスト知らなかったんですか?」と尋ねてきた。
知らなかったよ。
そもそも霊感をチェックしようなんて思ったことなかったからな。
幼少期から心霊体験をしていたため、改めて「霊感あるのかな?」なんて考えたこともなかった。
以上で私の霊感チェックは多少ザワつかせるぐらいの結果で終わったが、問題はここからだった。
やめておけばいいのに
心理テストか、おもしろそうだな!
後輩に懇願され、坂本を部室に呼び出した。
やめておけばいいのに……。
彼こそ霊感の塊で、改めて霊感の有無など確認する必要がないため、霊感チェックテストは知らないはずだと思ったらしい。
案の定、彼はテストのことを知らなかった。
目を閉じて、素直に後輩の言葉に従いテストを進める坂本。
その姿を私と後輩達が少しハラハラしながら見守っていると、しばらくして彼は目を開いた。
先に書いておくが、私達が抱いたハラハラした感情は杞憂に終わらなかった。
終わったよ。
ここで質問を投げかけるのだが、私の提案で少し変更を加えさせてもらった。
家に何かおかしなとこはありませんでしたか?
私が問われた「誰かいたり、すれ違ったりしませんでしたか?」という質問は、誰かいたりするかもという先入観を与える可能性があると思ったからだ。
それはさておき何も知らない坂本は、能天気に質問に答えた。
家に変なとこはなかったけど、風呂場とトイレ、あと階段と2階の部屋に知らない人がいたな。
平然と「顔まではよくわからなかったけどな」と続けた坂本に、部室にいた全員が戦慄した。
しかし我々の反応など気にせず坂本はさらに続けた。
途中間違えて押し入れの襖まで開けちゃったんだけどさ、開けた瞬間に日本人形みたいなのがボトッて落ちてきてビックリしたよ。
さすが俺、想像力が豊かなんだな。
先輩、もういいです……
ハハハと笑う坂本に、出題していた後輩がストップをかけた。
どうやら坂本は想像力テストか何かと勘違いしていたようで、今やったのが霊感チェックテストだったということを暴露すると、へぇ~と感心したように頷き、私の方を見て言った。
視世はわかるよな?
その言葉に私は黙って頷いた。
先ほど坂本が「知らない人がいた」という場所、風呂場・トイレ・階段・2階の部屋は、実際に怪奇現象が起こった場所なのである。
未だに坂本の脳内によぎるということは、移動することも成仏することもなく、変わらずそこにいる、ということなのだろう。
何はともあれ、私に微弱な霊感があることと、坂本にがっつり霊感があることは、このテストによって再証明されてしまったのではないかと思う。
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