【怖い話40】おかしな天井

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心霊系の怖い話

今回の話は 【怖い話20】おかしな間取り に出てきた家の話である。

未読でも差し支えはないが、後半に一部繋がりのある話が出てくるので、先に【怖い話20】をお読みいただければと思う。

たまり場

H先輩
H先輩

高校生の時は素行不良でさ、よく学校サボって俺の家に集まってたんだよ。

ある日のバイト終わり、ファミレスでかなり遅めの夕食を食べながらH先輩が話し出す。

H先輩
H先輩

俺が中学生になったら、母親がパートじゃなくて正社員として働き出したんだ。

H先輩の母は看護師だと聞いていた。

H先輩
H先輩

看護師だから夜勤もあってさ、母親が夜勤の日には友達が泊ってくんだよ。

学校をサボって集まっては夜遅くまで騒ぎ、そのまま眠りこける。
そんな怠惰な日が多かったという。

H先輩
H先輩

でも、ある出来事があってから俺の家に集まらなくなったんだ。

いつものこと

その日も4~5人で騒いでは盛り上がっていたという。

友人
友人

そろそろ寝るか……

遊び疲れた誰かが声を上げると、すぐに全員が賛同した。
勝手知ったる人の家、来客用の布団を手際よく敷いて、いつものように雑魚寝となる。

H先輩以外は寝つきが良い人ばかりで、しばらくするとすぐに寝息が重なって聞こえてきたという。
友人達の寝息をぼんやり聞きながら、そのうち先輩もウトウトし始めた。

しかし、心地よい眠りにいざなわれていた時だった。

ペタペタペタペタ

そんな音が聞こえた。

普通であれば多少なり恐怖するだろうが、先輩は焦らなかったという。

H先輩
H先輩

またどっかから入ってきたか。

せっかく寝れそうだったのに……。

先輩宅はけっこう古い家だったため、屋根裏に入り込んだネコやネズミが運動会を開催することが多く、慣れっこだったという。

初めのうちは深夜に鳴る足音にビクついていたらしいが、1度屋根裏を覗き込んで正体を確かめてからは、特に怖いと思うことはなくなっていた。

H先輩
H先輩

まだどっか入り込めそうなとこあったのかなぁ……

数日前に塞いだ通気口のことを考えながら、走り去ったのか足音が聞こえなくなったことに安心し、眠りにつくことができた。

恐怖の目覚め

友人
友人

うわぁぁ!!

翌日、目覚ましではなく誰かの叫び声で目を覚ますこととなった。

寝不足な目を擦りながら起き上がり、イラつきながら声の主を確かめようとするも、H先輩も同じ道を辿ることとなった。

H先輩
H先輩

うるせぇよ!
せっかく気持ちよく寝てたの……うわぁぁ!

友人
友人

うわっ!
何だよあれ!?

目を覚ました友人達が次々と叫び声を上げる。
叫び声を上げた全員の目線の先には、天井しかない。

しかし、全員が全員、天井を見上げたまま固まっていた。

イメージ図

天井を這うように手形がついていた。

昨夜のペタペタという音が、決して屋根裏から聞こえてきた音ではなかったことが手形から伝わり、先輩は身震いをした。

手の平は小さく、指だけが異様に長い手形は、絶対に人間のものではなかった

友人
友人

こっ、これ、お前のイタズラだよな!?

答えはわかっているだろうに、友人の1人が藁にもすがる思いで言葉を発する。

しかしその思いは縋った藁と一緒に沈み果ててしまう。

H先輩
H先輩

おっ、俺じゃねーよ!

いくら背が高いっつっても、さすがに天井までは届かねーし!

友人
友人

ジャンプすれば……

H先輩
H先輩

ジャンプして、こんなキレイにクッキリ手形を残せると思うか?

問う方も答える方も、声は震えていた。

友人
友人

いっ、イスだ!
イスに乗れば!!

H先輩
H先輩

お前らがひしめき合って雑魚寝してるとこにイスを置けるわけねーだろ!

友人達の必死の抵抗は1つずつ丁寧に打ち砕かれていく。

友人
友人

とっ、とりあえず、雑巾とかで消そうぜ……

少し冷静さを取り戻した者の提案で、いそいそと掃除の準備を始めた。

しかしその手形はベッタリと付いており、消えなかった………という、いかにもホラー映画的なことはなく、少し力を入れて擦ればすんなり落ちたらしい。

だが、手形の成分はわからなかったという。

水で濡れて付いているわけでもなければペンキでもない。その部分だけホコリがなくなって描かれているわけでもなく、正体不明の成分で構成された手形だった。

恐怖の始まり

私は先輩宅の妙に真新しい天井を思い出しながら話を聞いていた。

H先輩
H先輩

何回か同じことがあって、ついに誰も来なくなったんだよ。

苦笑いしながら「そりゃそうだよな、俺だって引っ越したいって思ったぐらいだ」と言う先輩。

H先輩
H先輩

そんな頻繁に起こる現象じゃなかったし、条件みたいなもんもないんだよ。

定期的に発生するわけでもなく、「満月の夜」や「新月の夜」などの特定の日に起こるわけでもないらしい。

視世陽木
視世陽木

そのたびに消してたんですか?

H先輩
H先輩

そうだよ。手形の成分は気になってたんだけど、調べる金もないしな。

しかし掃除の手間を煩わしく思い、ある日発生した手形をそのままにして不動産屋に連絡、天井を張り替えてもらったのだった。

H先輩
H先輩

畳の下のシミ (※【怖い話20】おかしな間取り 参照) のことを知ってるぞって脅したら、工事費は不動産屋持ちになったよ!

先輩は笑いながら話したが、私は首を横に振った。

視世陽木
視世陽木

いやいや、笑えないですよ!

不動産屋は手形について何か知ってたんですか?

H先輩
H先輩

俺も気になって聞いたんだけど、知らないってさ。

先輩は「事故物件なのは知ってるぞ!」と仄めかしていたので、不動産屋は隠す必要もない。
おそらくは引き継ぎが不足していて、担当者は本当に知らなかったのだろう。

H先輩
H先輩

天井を張り替えてからは何も起こってないからさ、部屋にいたんじゃなくて、天井自体に憑いてたんだろうな。

そんな推測でこの怖い話は幕を閉じたのだが、この話を聞いて以降、私は夜の闇に乗じて鳴る音には特に敏感になってしまった。

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