【怖い話33】事故番号

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怖い話 事故番号人にまつわる怖い話

間違い電話

Wくん
Wくん

確証はない話なんだけど……

 ある日のこと、友人(以下Wくん)が「どうしても聞いてほしい話がある」とメッセージを送ってきたので電話で聞くことになった。

視世陽木
視世陽木

どんな話でも大丈夫だよ。

 おそらくは怖い話だろうと当たりをつけていたため快諾。Wくんは心底ホッとした声で話し出した。

Wくん
Wくん

助かるよ。1人で抱えておくにはモヤモヤする話だし、かといって誰にでも話せる内容じゃないからさ……

視世陽木
視世陽木

何があったの?

Wくん
Wくん

ちょっと前に仕事を辞めたんだけどさ、携帯の機種変するついでに番号も変えたんだよ。

 言われてみれば、少し前にWくんから「番号変えたから登録よろしく!」というメッセージを貰った気がする。

 事情を聞くと、営業職だったがブラック寄りの企業だったため少し前に退職。退職後しばらくして番号を変えざるを得なかったのだという。

Wくん
Wくん

仕事用の携帯なんて支給されなかったからさ、仕事辞めてからもプライベート携帯にバンバン電話がかかってきてたんだよ……

 事情を聞いて納得しかけた私だが、もう1つおやっと思うことがあった。

視世陽木
視世陽木

あっ、でもさ、番号2回変えてなかった?

 奇妙だったのは、「番号変えたから登録よろしく!」というメッセージを受けてから1ヶ月するかしないかのうちに、「諸事情によりまた番号変わりました。お手数ですが再登録お願いします」というメッセージが送られてきたこと。

気になりはしたが根掘り葉掘り聞くのも失礼かと思い、その時は深く突っ込まずにいた。

Wくん
Wくん

その2回目の番号変更に関係する話なんだよ……

 どうやらここからが話の本題のようだった。

変更理由

Wくん
Wくん

番号変えてから仕事関係の電話はなくなったんだけどさ、代わりに間違い電話がかかってくるようになったんだよ。

視世陽木
視世陽木

めんどくさいな。

 090,080,070から始まる番号は、理論的に言えば3億個ぐらいある。

しかし現在はサブ機やタブレットなどを含め2~3台持ちも珍しくないし、仕事用として使われる法人携帯などもあるため、電話番号が枯渇気味なんだという。

 そこで起こるのが、電話番号の使い回しだ。

使い回す場合でも、通常であれば1年ぐらい間をおいてから次の人に渡すので問題が起きにくいのだが、番号が枯渇してくると3ヶ月から半年程度で次の人に割り振られることもあるのだという。

 どうやらWくんは使い回しの番号を引いてしまったのだった。

Wくん
Wくん

1日1回は間違い電話がかかってきてたんだよ。

 どれぐらい間がおかれた番号かはわからないが、1日1回は結構な頻度だと思われる。

視世陽木
視世陽木

前にその番号を使ってた人が借金してたとかかな?

Wくん
Wくん

俺もそう思ったんだけどさ、いろんな番号からかかってくるんだよね。

 よほど変な借り方をしない限りは借りれて2~3社ぐらいだろうから、違う番号で頻繁にかかってくるとは考えにくい。

Wくん
Wくん

数えてたわけじゃないけど、10人以上から間違い電話がかかってきたんだよ。

 闇金みたいなヤバいところから借りたか、多数の携帯を所持した特殊詐欺グループなども可能性として考えられるが、電話口で話した感じでは物騒な感じはなかったらしい。

視世陽木
視世陽木

ってか電話に出たのかよ!?

Wくん
Wくん

登録し忘れた人かもって思って最初の内は出ちゃってたんだよ……

 電話の相手は性別年齢問わず様々だったという。

電話の内容

Wくん
Wくん

不思議だったのがさ、全員が全員「ササキさんの携帯ですか?」って聞いてくるんだよ。

※ ササキさんは仮名。

 Wくんは毎回名前を確認される点を不思議に思ったという。

 確かに、携帯電話同士であれば互いに番号を登録していることが多いので相手の名前を確認する機会は少ないだろう。中には固定電話時代の名残りや癖で確認する人もいるだろうが、全員が全員確認するとは考えにくい。

Wくん
Wくん

「違います」って答えたら、ほとんどの人はすんなり切ってくれたから面倒なことにはならなかったんだけどさ。

 中には「久しぶりにつながったと思ったのに」「ササキはどこに行った?」と絡んでくる人もいたらしいが、ほんの数人だったので気に留めるほどでもなかった。また、一度人違いだと伝えると同じ番号からは二度とかかってこなかったという。

Wくん
Wくん

それでもめんどくさかったからさ、もう1回番号を変えたんだよ。

 ここまで聞いて、私には1つの疑問が生じた。

視世陽木
視世陽木

話の内容はわかったし不思議な部分もあったけどさ、わざわざ俺に聞かせたい話だったの?

 間違い電話の話を聞かされて不満だったわけではないが、簡単にまとめると使い回しの電話番号を引いてしまって間違い電話に迷惑しただけの話だ。Wくんがやったように、番号を変えれば解決する程度の問題である。

 しかし私の疑問は想定済みだったのか、Wくんは苦笑しながら続けた。

Wくん
Wくん

もちろんこれだけじゃなくて、ちょっと怖い後日談があるんだ。

間違い電話の後日談

 続けて後日談が語られた。

Wくん
Wくん

2回目の番号変更をしてからしばらくして、地方紙の新聞である記事を目にしたんだ。

 2度の番号変更により間違い電話はなくなり、平穏に過ごしていた日のことだった。

Wくん
Wくん

山中で男性の他殺体が発見されたって記事だった。

 まだ捜査段階で詳しいことはわかっていなかったのか、内容の割には小さな記事だったという。

視世陽木
視世陽木

その記事がどうかしたの?

Wくん
Wくん

殺害された人の名前が「ササキさん」だったんだ。

 驚きに少し声を漏らしそうになったが、冷静に考えると大したことはない。ササキさんはメジャーな苗字で全国各地に多数存在する。※ ササキさんは仮名だが実際の苗字も日本では多い苗字だった。

視世陽木
視世陽木

偶然だろ?

Wくん
Wくん

俺も偶然だと思ってたんだけどさ、捜査が進むにつれて徐々に山中で見つかったササキさんの詳細がわかってきたんだ。

視世陽木
視世陽木

ササキさんの詳細?

Wくん
Wくん

何となく気になって個人的にもネットとかで調べたんだけどさ……

 山中で見つかったササキさんは、麻薬の売人だったのだという。この事実を聞いた瞬間、足りないピースは多いものの頭の中で急速に奇怪なパズルが組み上がっていった。

視世陽木
視世陽木

まさか、こう言いたいのか?

 1回目の番号変更で得たのは麻薬の売人をやっていたササキさんの番号で、かけてくる相手は購入希望者。しかしササキさんは何らかの事情で失踪・殺害されてしまい、証拠隠滅のために番号は1度解約される。

視世陽木
視世陽木

――その番号をたまたま引いてしまったから、知らない人から代わる代わる電話がかかってきた、とでも?

 自分で言葉にしたくせに、途中で薄ら寒くなってしまった。

Wくん
Wくん

あくまで俺の想像だよ。最初に言ったじゃん、確証がない話だって。

視世陽木
視世陽木

……ただの偶然だよ。

 Wくんに向けたのか、それとも自分に言い聞かせるためだったのか、零れた言葉の真意はわからなかった。

事故番号

 Wくんが引いたような次の人に迷惑がかかるような番号は『事故番号』と呼ばれている。

事故番号とは、新しく取得した電話番号が以前使われており、しかもその番号はストーカー被害やサラ金、犯罪に利用されていた番号だった場合、その番号を次に使う利用者も被害を受けてしまう電話番号のこと。

 事故番号を引いてしまうWくんの運が悪いのか、はたまた普段は見逃してしまうような小さな記事に目がいった注意深さが悪いのか、何とも判じ難い。

 Wくんも言ったように因果関係はわからないし、わざわざ調べたりすることはない。

だが世の中にはこんな嬉しくもない偶然もあるんだと、少し背筋が冷たくなるような怖い話だった。

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