その番号、前の持ち主は誰だ?
今、自分が使っている携帯電話の番号。
それが「新品」だという確証はあるだろうか?
実は現在、携帯番号は枯渇気味で、解約された番号が数ヶ月から1年程度で次の人に割り振られる「使い回し(リサイクル)」が一般的になっている。
もし、新しく手に入れた番号が、とんでもないトラブルを抱えた人物の番号だったとしたら……。
これは、友人のWくんが実際に体験した、携帯番号変更にまつわる**「事故番号」**の怖い話だ。
謎の連続変更:なぜ1ヶ月で2回も番号を変えたのか
ある日のこと、友人(以下Wくん)から「どうしても聞いてほしい話がある」と切迫したメッセージが届いた。
少し前に仕事を辞めた彼は、心機一転のために携帯の機種変を行い、電話番号も新しくしていた。
しかし奇妙なことに、そのわずか1ヶ月後、「諸事情によりまた番号変わりました」という2度目の変更通知が届いていたのだ。
電話口の彼は、明らかに何かに怯えていた。
「確証はない話なんだけど……1人で抱えておくにはモヤモヤするし、かといって誰にでも話せる内容じゃなくてさ」
「何かあったの?」
聞けば、1回目の番号変更は、退職後も鳴り止まない仕事関係の電話を断ち切るためだったという。
しかし、新しい番号を手に入れた彼を待っていたのは、静寂ではなく、さらに奇妙な「間違い電話の嵐」だった。
鳴り止まない着信と「ササキ(仮名)」という男
Wくんによると、新しい番号にしてから1日1回は必ず知らない番号から着信があったという。
「前の人が借金でもしてたのかなって思ったんだけど、そんな感じじゃなかったんだよね」
おかしいのは、その頻度とかけてくる相手だったと言う。
- 頻度: 毎日かかってくる
- 発信元: 少なくとも10以上の異なる番号から
- 相手: 性別・年齢問わず様々
借金の取り立てなら特定の業者から何度も来るはずだが、かけてくる番号は毎回違う。
そして何より、電話に出ると全員が判で押したようにこう尋ねてくるのだ。
「ササキさん(仮名)の携帯ですか?」
今の時代、携帯電話にかける時にわざわざ相手の名前を確認することは稀だ。
登録済みの相手にかけるのが普通だからだ。
それなのに、全員が示し合わせたように「ササキ」を探している。
「『違います』って答えたら大抵は切れるんだけど、中には『久しぶりにつながったのに』とか『ササキはどこに行った?』って絡んでくる奴もいてさ……」
気味が悪くなったWくんは、逃げるように2度目の番号変更を行ったという顛末だ。
と、話がここで終われば、ただの「迷惑な間違い電話」で済んだはずだった。
点と点が繋がる:新聞の片隅にあった「答え」
2度目の変更でようやく平穏を取り戻したある日。
Wくんは、地元の地方紙の片隅に掲載された小さな記事に目を止めた。
『山中で男性の他殺体を発見』
よくある事件記事。
しかし、殺害された被害者の名前に、Wくんの背筋は凍りついた。
被害者の名前は「ササキ」。 あの日々、受話器の向こうの誰もが探していた名前だった。
「偶然だろ? ササキなんて苗字、どこにでもいるし」
そう返した私に、Wくんは震える声で、その後の捜査で判明した「ササキ」の正体を告げた。
「俺もそう思ったよ。でも気になって調べたらさ……山中で見つかったササキさん、麻薬の売人だったらしいんだ」
「事故番号」の正体
その瞬間、頭の中で全てのパズルが最悪の形で組み上がった。
- Wくんが引き継いだのは、麻薬の売人・ササキの番号だった。
- 毎日かかってきていた電話は、薬物を求める顧客(ジャンキー)たちからの注文。
- ササキは何らかのトラブルで失踪し、殺害され、携帯は解約(または廃棄)された。
- 何も知らないWくんが、その「顧客リスト」とも言える番号を引き継いでしまった。
もし、Wくんが間違い電話の相手に深く関わっていたら?
もし、ササキを消した組織が、この番号が再び使われていることに気づいたら?
Wくんが遭遇したのは、不動産でいう「事故物件」ならぬ、いわゆる「事故番号」だったのだ。
【事故番号とは】 以前の持ち主が犯罪に関わっていたり、ストーカー被害や多重債務などのトラブルを抱えていた電話番号のこと。番号がリサイクル(使い回し)される際、知らずに契約した次の持ち主にも被害が及ぶことがある。
おわりに
「あくまで想像だよ。確証はない」
Wくんは最後にそう笑ったが、その声は引きつっていた。
因果関係はわからない。わざわざ調べる必要もない。
ただ、携帯ショップで新しい番号を選ぶとき、あるいは自動的に割り振られるとき、その番号が以前、「誰」に使われ「何」に使われていたのかを知る術はない。
次に携帯電話を契約するとき、少しだけ思い出してほしい。
これから手にするその番号は、もしかすると「ササキさん」の番号かもしれないということを……。


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