【怖い話20】おかしな間取り

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人にまつわる怖い話

間取りへの関心

 『事故物件』という言葉が有名になると同時に、物件の間取りも注目されるようになった。 ” 変な間取り ” や ” 変わった間取り ” というキーワードで検索すれば、無数のページがヒットする。

 狭小な土地ゆえに変わった間取りにせざるを得なかったり、設計士のこだわりで変な間取りになってしまったり、家主の希望で変な間取りになってしまったりと、間取りが生まれた背景も実に多種多様だ。

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 今回は、後から変な間取りになってしまった家に住んでいた先輩の話。


 H先輩の家には何度か遊びに行ったが、初めてお邪魔した日にすぐに気づいた。

H先輩
H先輩

やっぱりお前にはわかるか……

玄関先で立ち止まった私に、苦笑しながら言った。

H先輩
H先輩

事故物件なんだよ、ここ。

 学生時代にバイトしていたパチンコ屋の先輩で、やや強めの霊感を持っていたH先輩。

父親が霊感の持ち主で遺伝してしまったらしい。

幼い頃に両親が離婚し母親に引き取られたH先輩。

女手1つで立派に育て上げるべく、母親は朝から晩まで働き詰めだったという。

裕福とは程遠い経済状況だったらしく、家賃を節約すべく母親が事故物件に的を絞って探した結果がその家だった。

視世陽木
視世陽木

ちょっと気配を感じただけです。慣れてるんで大丈夫ですよ。

別に先輩の家を嫌悪したわけではないので慌ててフォローした。

人様の家庭のことを深く聞きほじるつもりもないし、嫌な気配なんて坂本の家ですっかり慣れてしまっていたので何の問題もない。

H先輩
H先輩

そう言ってくれると助かるよ。多少なり霊感がある人は家に入るのを嫌がるからな。

 私達は互いに気を遣い合いながら家の中へ入った。

狭い部屋と新しい天井

H先輩
H先輩

コーヒー、ブラックでいいだろ?

 部屋に通されてすぐ、飲み物の準備をするために先輩はキッチンへ向かい1人になった。

不躾にキョロキョロと部屋を見回して気づいたが、先輩の部屋は不自然に狭かった

他3面の内壁は古びた感じなのに、ある一面の壁だけ新しくて妙な圧迫感があった。天井も不自然に新しかったのを覚えている。

コーヒーを入れて戻ってきたH先輩が、キョロキョロしている私を見て苦笑いした。

H先輩
H先輩

変な家だろ?

視世陽木
視世陽木

変っていうか、間取りがおかしい気がします。

不自然に狭いし、壁は1面だけ新しくて天井も張り替えられてますし。

H先輩
H先輩

さすがだな。

 私の言葉に深く頷いて続けた。

H先輩
H先輩

視世はこういうの大丈夫だろうからさ、教えてやるよ。

立ち上がったH先輩は、1面だけ新しい壁に接する畳におもむろに手をかけた。

H先輩
H先輩

いつの話かまではわかんないけど、夫婦喧嘩がエスカレートして旦那が奥さんを刺し殺すって事件がホントにあったらしい。

よっと軽く声を上げ畳を持ち上げると、畳の下の床はどす黒く変色していた。

H先輩
H先輩

畳替えをしただけで、ハウスクリーニングとかは入れなかったらしい。

床の変色は間違いなく血の跡、「最初から事故物件として売り出すつもりだったんだろうな」と先輩は笑っていた。

H先輩
H先輩

この部屋は隣の部屋と一繋ぎだったらしいけど、壁で区切って2部屋にして内部リフォーム済みってことにしたんだってよ。

視世陽木
視世陽木

ハウスクリーニングは入れないのに、内部リフォームはやったって体にするんですね。

すると先輩は、私の質問には答えず立ち上がった。

H先輩
H先輩

隣の部屋も見せてやるよ。

隣室の怪

 隣の部屋は先輩の母親の寝室だった。

H先輩
H先輩

ここなんだけどな……

再び畳に手をかけるH先輩。

先輩の部屋とを区切る新しい壁に接した畳だ。

H先輩
H先輩

よっ!

先程と同じように軽く畳を持ち上げると、その下の床板もどす黒く染まっていた

H先輩
H先輩

ここ、見てみ?

あっちの部屋もそうだったけど、壁のとこでぷっつり血が途切れてるだろ?

視世陽木
視世陽木

確かに。

……えっ? もしかして?

H先輩
H先輩

たぶんだけど、ここを壁で区切ることで殺人があった場所をなくしたことにしたんだと思う。

視世陽木
視世陽木

ただの気休めじゃないですか!

H先輩
H先輩

俺もそう思うよ。

視世陽木
視世陽木

実害はないんですか?

H先輩
H先輩

実害はないけど、夜中に人の気配を感じるんだ。

でも、その人の気配は動くことはないんだ。

なぜ?と問うまでもない。

目の前には新しい壁がある。

視えない私には断定できないが、霊ごと壁で区切ってしまったのではないだろうか?

推測に1人怖がっていると、剥がした畳を戻しながら先輩が呟いた。

H先輩
H先輩

このシミ、年々広がってる気がするんだよな

早いとこ引っ越したいんだよ、こんな化け物屋敷。

最後の恐怖

 数年後、先輩はその家を引っ越すことになった。

引っ越し作業の手伝いを頼まれた私は、真新しいものに替えられた畳を見下ろしながら尋ねた。

視世陽木
視世陽木

先輩、この下は?

すると先輩は畳を剥がしたりせず、真面目な顔で私を見て言った。

H先輩
H先輩

もう畳1枚じゃ収まってない

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