【怖い話12】あの笑顔の裏に

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怖い話 視世 心霊系の怖い話

夜遊びの誘い

 学生時代のある日、バイトが終わって携帯を見るとメールが1通入っていた。

今日の夜、久々に麻雀やるから、バイト終わったら急いで来てくれ

 私は麻雀が大好きで、周りにも麻雀好きが多かったため高頻度で麻雀をしていた時期があった。

 しかしその頃はめっきり集まる回数が減っていて、前回の麻雀から1ヶ月以上経過していた。久々の麻雀にテンションが上がった私は、バイト後すぐ先輩の家に直行した。

 メールをくれたT先輩が住むアパートは、防音対策がかなりしっかりなされていて、深夜に麻雀をやろうが隣人に迷惑がかからないという好物件。実際に隣の部屋に入れてもらい確認したことがあるのだが、本当に一切の音がしなかった。

 少しお高めの良いアパートだったのだが、私には1つだけ不満があった。その不満とは、駐輪場が狭くて来客の自転車やバイクを停めるスペースがないことだ。基本的にバイク移動だった私は、少し離れた有料駐輪場に停め、アパートまで歩いて向かわなければならなかった。

 いつものように有料駐輪場に停め、アパートへ向かおうとすると同時に電話が鳴った。

T先輩
T先輩

今どこ?

視世陽木
視世陽木

ちょうどいつもの駐輪場に着いたとこです。

T先輩
T先輩

N(仮名)が急用できて帰らないといけなくなってさ、悪いけど走ってきてくんない?

視世陽木
視世陽木

わかりました。

 電話を切ると同時に私は走り出した。途中のコンビニで飲み物を買いたかったのだが、N先輩の急用は十中八九彼女さん絡みであることが多かったので、先輩の幸せのために泣く泣く飲み物は諦めることにした。

 名残り惜し気にチラッとコンビニを見ると、店内の雑誌コーナーにK先輩(仮名)の姿を見つけた。するとK先輩もすぐに気づいたようで、こちらへニコリと笑いかけてくれた。

 K先輩は麻雀を通じて知り合ったいつも笑顔で明るい先輩で、麻雀の場で頻繁に会っていたのですぐに仲良くなった。

 しかし麻雀大好きなK先輩は、麻雀の集まりが減り始めるより少し前に「学業もプライベートも忙しくて」と言い出し、一足先に麻雀の場を離れていた。

 遠目にといえどかなり久々の再会だったのでゆっくり話したかったが、N先輩の件で急いでいたので、ペコリと頭を下げてコンビニを通り過ぎた。

静寂の中の告白

視世陽木
視世陽木

お疲れ様でーす。

T先輩
T先輩

お疲れ! 悪かったな、急がせて!

視世陽木
視世陽木

いえいえ、大丈夫ですよ!

N先輩
N先輩

いや、ホントすまん! ここまでやっていくから、そのあと続けて打ってくれない?

視世陽木
視世陽木

了解です!

 心の中で「飲み物買えたじゃん」「金山先輩とも話せたじゃん」と愚痴っているうちに局が終わり、N先輩は申し訳なさそうにいそいそと帰っていった。

 私が卓につき、いつものように麻雀が始まる。麻雀中は学校のことだったり何だりと楽しい雑談が展開され、勝ったの負けたのを繰り返していた。

 局の切れ間、ふと私は口にした。

視世陽木
視世陽木

さっき下のコンビニにK先輩がいましたけど、誘わなかったんですか?

 誘ってれば俺が来るまで待たなくてもよかったのにと、ハハハと冗談交じりに発しただけなのに、なぜかその場が静まり返った。

視世陽木
視世陽木

えっ、何この空気!? もしかして喧嘩してて誘ってなかったとか……?

 急に静まり返った場に1人ヒヤヒヤしていると、T先輩が口を開いた。

T先輩
T先輩

陽木、Kを見たの?

視世陽木
視世陽木

え? 見ましたよ?

T先輩
T先輩

いつ!? どこで!?

 あせったようなT先輩の声に少し身じろぎしつつ答える。

視世陽木
視世陽木

ちゅ、駐輪場に着いたすぐ後ですよ。急いでたんで外から頭下げただけですけど、コンビニにいましたよ。

T先輩
T先輩

ホントに? ホントにKだった!?

 あまりにしつこく聞いてくるので、ちょっとムッとしてしまう。

視世陽木
視世陽木

絶対K先輩でしたよ! どうしたんですか? 喧嘩でもしたんですか!?

 少し棘を含ませながら肯定すると、再び場が静寂に包まれた。

 しばらく後、T先輩が震えた声でこう呟いた。

T先輩
T先輩

K、1ヶ月以上前に死んだんだよ……

ありえない再会

視世陽木
視世陽木

またまたぁ!! 冗談にしても手が込みすぎですよ!

 イタズラ好きの先輩ばかりだったので、私が来る前に全員で打ち合わせしてドッキリを仕掛けようとしたのだろう。そう思って最初は笑っていた。

 あえて私がバイトの日に麻雀をセッティングし、N先輩を途中退席させる。しょっちゅう彼女さんに呼び出されているN先輩なら不自然さはない。一方で近くのコンビニにK先輩を待機させておき、私に発見させるのも計画のうちだ。私の性格から予測して、急用で帰らないといけない先輩のために泣く泣く通り過ぎることまで織り込み済み。

そんなイタズラであってほしかった。

T先輩
T先輩

正月休みが終わってもKが学校に出てこなかったんだ。

 私を呼び出したことに責任を感じたのか、震えた声のままT先輩が語り出した。

T先輩
T先輩

メールしても返事がないし、電話も繋がらない。だからここにいるみんなでKのアパートに行ったんだよ。

 ここで、今までほぼ無言だったM先輩が口を開いた。

M先輩
M先輩

ドアは鍵がかかってて開かなかった。不動産屋に行って事情を説明したんだけど、ドラマみたいにすんなり開けてもらえなかったよ。

 ドラマのワンシーンのように、血縁者や交際者や友達を装って合鍵で開けてもらうなんてことは、よほど管理が杜撰な業者じゃないとやらないらしい。入居時の契約書に記されていたK先輩の親に電話をかけ、事情を話したとのこと。

T先輩
T先輩

普段から親にあんまり連絡取ってなかったみたいでさ、連絡が来ないのが普通だったらしい。まず母親がKに電話をかけるってことになったんだけど、やっぱり繋がらなかったって。

 さすがに親も異常事態だと思い、鍵を開けて入って確認してほしいと逆に頼まれたという。

M先輩
M先輩

不動産屋の人と一緒にKのアパートに行ったんだけどさ……

 そこで先輩達の口が止まった。何となく悲しすぎる結末を悟った私は、「その先は話さなくて大丈夫です……」と、蚊の鳴くような声で話を終わらせた。

優しすぎる先輩達

T先輩
T先輩

……陽木はKを慕ってたし、Kも陽木のこと可愛がってたからさ。俺達相談して、お前には話さないことにしたんだ。

M先輩
M先輩

今日が四十九日なんだけど、法要は親族だけでやるって聞いてたからさ。俺達は俺達なりに弔おうって思って久々に集まったんだよ。

 だからこその麻雀、だからこその久々の開催だった。K先輩の死でみな心にダメージを負い、今までのようにのんべんだらりと麻雀をできなくなったのだという。

 しかし自分達なりに弔うために、K先輩が大好きだった麻雀という形を選んだらしい。そんな事情があったため先輩達はいつもより静かで、M先輩も途中まで口数が少なかったのだ。

T先輩
T先輩

実家で四十九日法要もあってるのにわざわざ姿を見せるだなんて、よっぽど陽木のことが気になってたんだろうな。

 T先輩の言葉を引き金に、私は涙を流した。めったに人前で泣かない私が、子どものように声を上げて泣いた。

遅れたサヨナラ

視世陽木
視世陽木

先輩、ありがとうございました……

 翌日、先輩達から教えてもらったK先輩の実家を訪ね、事情を話して墓参りをさせてもらった。

 自分のための四十九日法要を置いてまで、わざわざ俺の前に姿を現してくれた優しいK先輩。コンビニで視た笑顔は、楽しく麻雀を打っていた時と変わらない、見た人の心を温かくする柔らかい笑顔だった。

 しかし、いつも見せていた笑顔の裏で、K先輩は死を選ぶほどの苦悩を抱えていたのだ。

 今となってはどうすることもできないが、ただただ安らかに眠ってくれていることを祈るばかりである。

後書き

 実は私は、この話を書くことも話すことも好まない。なぜなら、内容があまりにも私に都合がよい、まるでドラマのような話だからだ。

 以前別のサイトで同じ話を書いたことがあるが、心無い人から「嘘だろ?」「作り話だろ?」「先輩の霊を視たのは本当かもしれないけど、美化してるんだろ?」など、辛辣な感想やダイレクトメールを多数いただくこととなった。

 この話は間違いなく私が体験した実話だが、信じる・信じないは読者様の自由だ。私とて読んだ人全員が信じてくれるとは思っていないし、信じてもらおうとも思っていない。

 今回も書くかどうかかなり悩んだ話ではあるが、ブログ読者様の心の優しさを信じて書かせてもらった。

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