【怖い話9】視線を感じる

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怖い話 猫 視世心霊系の怖い話

背後からの視線

 (2021年執筆時)私は建設業で広報関係の事務をしているが、道具の撤収だったり掃除の手伝いで外に出る機会も多い。その日も現場管理者から「急に打ち合わせが入ったから」と連絡があり、代わりに片づけをすべく現場へと向かった。

 職人による資材の撤収が終わった後、ホウキとチリトリを手にお客様宅の周囲を掃いて回る。

 すると、誰かに見られているような気がした。

 作業を中断し視線を感じた方を見ると、風呂場の小窓が開いていた。耳を頼りに中の気配を伺うが、水音もしないし人の気配もしない。申し訳ないと思いつつチラリと中を見ると、1匹のネコがこちらをジッと見ていた。

 ふっくらとした白ネコだった。目がクリクリで、鍵尻尾が特徴のとても可愛らしい。ネコ好きな私はしばし目を奪われたが、仕事中だったためすぐに掃除に戻った。

写真

家主
家主

暑い中ご苦労様でした。冷たいお茶を用意したので飲んでいってください。

 作業終了の報告を終えると、家主さんがもてなしてくれた。とうに独立した息子達は盆正月ぐらいしか帰省しないため、旦那さんと2人暮らしでとても寂しいのだと言っていたため、私なんかで話し相手が務まるのであればと、急ぐ用事もなかったのでお言葉に甘えることに。

家主
家主

足腰を悪くしてからは必要な買い物ぐらいでしか外に出なくてねぇ

 世間話をしながら案内してくれたのだが、通されたリビングで驚くべきものを目撃してしまう。

視世陽木
視世陽木

すみません、あの写真は?

 リビングの棚に、ふっくらした白ネコの遺影だと思しき写真が飾られていた

家主
家主

うちで飼ってたネコよ。去年の夏に死んじゃってねぇ。

 寂しそうにポツリポツリとネコのことを話し出す家主さん。

家主
家主

とても賢い子だったわ。餌の量には気をつけてたのに、おやつの隠し場所を探し当てたり、封をしてる餌袋も器用に開けて食べちゃったりしてね。そのせいでふっくらしてしまって。

 かけがえのない時間を一緒に過ごしたのだろう、少し遠い目をしながら優し気に語っていた。

家主
家主

夏の暑い日にはお風呂場で涼んでることが多かったわ。誰に教わったわけでもないのに、そこが涼しい場所だってわかってたのねぇ。気持ちよさそうに尻尾を揺らして寝てたりしたのよ。


 紛れもなく怖い話だし、リビングで写真を見た時は飛び上がりそうなぐらい恐怖したのだが、家主さんの話を聞いて胸が締め付けられたのも事実だ。

 あの白ネコの霊は今もまだ風呂場にいるのだろうか。あんなに幸せそうに思い出を語る飼い主なら、可愛がられたネコに未練などなかっただろう。

 ならばあのネコがあそこにいる理由とは?

 年老いてしまった飼い主が心配で、鍵尻尾を揺らしながら夏の定位置で見守っているとでもいうのだろうか。

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