【恐怖体験】深夜のスナックで起きた不可解な現象…私が気づいた「ある違和感」の正体

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実話怪談のサムネイル背景用画像。お洒落で薄暗いスナックのカウンターに、黒いレースのワンピースを着た金髪の女性が立っている。背中を向けた彼女の肩口にある髪の隙間から、不気味で青白い小さな手が覗く。 心霊系の怖い話

社会人となってから、夜の街でよく酒を飲むようになった。
これは、行きつけのスナックで体験した忘れられない出来事である。

その日は、入店した瞬間から店内に妙な空気が漂っていた。

「あっ、視世さん!いらっしゃい!!」

顔馴染みのキャストであるAちゃんが、カウンター端のいつもの席へ案内してくれた。

「水割りでいい?」

「うん、お願い」

いつものやり取りだったが、ふとAちゃんの顔色が異常に悪いことに気がつく。
夜の店ということもあり、やや濃いめのメイクをしているのだが、それでも隠しきれないほどの青白さだ。

しかし、平日にしては店内が混み合っていたため、テンションを下げるような話題は避けるべきだと判断し、黙ってグラスを傾ける。

その後も、キャスト達は忙しそうに広くはない店内を行き来しており、私はその姿を酒を飲みながら眺めていた。

すると、その視界の隅に信じられないものが飛び込んできたのである。

(……手?)

肩にかかるほどの長さがあるAちゃんの巻き髪の隙間から、青白い小さな手がニュッと突き出していたのだ。

見間違いかと思い何度も瞬きを繰り返すが、その手は確実にそこにある。

時折フッと視えなくなる瞬間はあるものの、気配そのものが完全に消えることはなかった。

まるで赤ん坊のような小さな手からは、生きている人間の生気はまったく感じられない。
手は肩口にあるのに、まるで駄々っ子が母親の足元からすがりついているような、奇妙な感覚を覚えたのだ。

「視世さん、どうしたの?」

あまりにも凝視しすぎていたせいで、見送りから戻ってきたAちゃんに尋ねられる。

店内の客もまばらになり、閉店時間も近づいていたため、小さな声で軽く聞いてみた。

「Aちゃん、今日体調悪くない?」

唐突な質問に驚いたようだが、すぐにいつもの営業スマイルを作って答える。

「そうなんだよね。他のお客さんは気づかなかったみたいだけど、さすがに視世さんにはバレたかぁ」

体調不良は事実のようだ。

ここから踏み込むべきか、それとも口をつぐむべきか迷っていると、彼女の方から口を開いた。

「いつもと何か違う?」

首を傾げながら問う彼女の様子に、覚悟を決める。

間違っていたら失礼極まりない質問だったが、意を決して尋ねた。

「間違ってたら本当にごめんね」

「えっ?なになに?」

「子どもを堕ろしたことか、流産したことってある?」

あまりにも残酷で、無礼な質問。

辛い過去をえぐる行為かもしれないし、見当違いであっても怒られて当然の言葉である。

しかし、Aちゃんは感情を取り乱すこともなく、静かにこう告げた。

「視世さん、今日の閉店後って時間取れる?」

「明日休みだから大丈夫っちゃ大丈夫だけど……」

「頑張って片付け早めに終わらせるからさ、どっか近くで待っててくれない?」

そう言ったAちゃんは、無理して笑っているようだった。

その後、店の外で彼女の仕事が終わるのをひたすら待った。
事情を知らない人が見れば、完全に常軌を逸した出待ち客である。

やがて「お待たせ!」と駆け寄ってきたAちゃんと合流し、少し離れたファミレスへと向かった。

「いいよ、どうせ休みっていっても予定もないし」

「そんな寂しいこと言わないでよー!」

そんな軽口を叩き合うが、彼女の表情はやはり暗い。

「……話しにくかったら、無理しなくていいからね」

非常にナイーブな問題だ。
いくら親しいとはいえ、一介の常連客に打ち明けるような内容ではないだろう。

それでも彼女は「ううん、聞いてほしいの。気づいたのが視世さんでよかった」とポツリポツリと語り始めた。

「私ね、最初の子を流産しちゃったの」

彼女がシングルマザーであることは以前から聞いていた。
元夫のDVが原因で離婚し、現在は実家で1人の子どもを育てているという。

しかし、その前に流産を経験していたのは初耳だった。

「悲しかったし、めちゃくちゃ泣いたよ。そしてその悲しみと、命の尊さを忘れないために、アンクレットを作ったんだ」

言われて足元に視線を落とすと、華奢な足首に細いアンクレットが光っている。

ブレスレットだと職種によっては身につけられず、仕事の邪魔にもなってしまう。
だからこそ、目立ちにくい足元を選んだと彼女は言った。

「流産した日を命日にして、毎年その日だけ付けてるんだ。忘れないためにね」

もう10年ほど前の出来事だという。

当時彼女はまだ20歳そこそこ。
想像を絶するような悲しみを、若くして抱え込んでいたことだろう。

「……髪の隙間から、子どもの手が視えたんだ。たぶん甘えたくて、おんぶされてるような感じなのかな」

「うん、そうだと思う。今日1日、ずっと肩が重かったから」

そう語る彼女は、失った命の重みを全身で受け止めているように見えた。

「最初は怖かったんだけどね、何となくわかるんだ。母親だもん。産んであげることができなかった、あの子だって」

笑顔のまま、彼女の目から大粒の涙がこぼれ落ちる。

「今までね、何人かに相談もしたんだよ? でもみんな口を揃えて、『供養しなよ!』ってしか言わないんだ」

世間一般の反応としてはそれが普通だろう。
顔色が悪くなるほどの影響が出ているのだから、決して好ましい状態とは言えない。

「けどね?それでも私の子どもなんだ。体調とかのこともあるから、年に1回しか一緒にいてあげられないけど、確かに私の最初の子どもなんだって、そう思うの」

心配してくれてるのはわかってたから、供養を勧める知人達に反論できなかったのだろう。
強がっていた笑顔は消え、悔しそうにギュッと拳を握りしめていた。

そこで、過去に聞いたある言葉を、少しだけ言い回しを変えて伝えてみる。

「霊感が強い友人から聞いた言葉なんだけど……」

「え?」

「水子の霊を供養すると、その子は2回死ぬことになる。流産した時と、供養させられるときの2回」

「そう!それなの!」

「だからこそ、命の大切さや尊さを知って受け止めてるAちゃんは偉いと思うし、すごいと思う。月並みな表現だけど『母は強し』ってね」

その言葉を聞いた途端、Aちゃんはせきを切ったように号泣し始めた。

これまで長い間、たった1人でその悲しみと向き合い、耐え続けてきたに違いない。

今はただ、気の済むまで泣けばいいと思った。

「本人に直接憑いているなら、健康を考えて俺も供養を勧めたかもしれない。けど、アンクレットに宿っていて、それも年に1回しか付けないなら、大丈夫かなって思う。無責任なことは言えないけどね」

泣き止みつつあることを確認し、私はそっと言った。

「ホントにね、ちょっと具合が悪いぐらいなの。顔色は化粧で隠せるし、動けないほどの体調の悪さじゃないの」

「無理がないのなら、誰にも止める権利はないさ」

頷く彼女の肩口には、まだ小さな手が乗っている。

しかし、その表情は憑き物が落ちたかのような、晴れやかな笑顔に変わっていた。

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