【怖い話2】不思議な女②

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人にまつわる怖い話
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音声動画化しました!
※ 聞きやすさを重視し、下の投稿を多少改変しています。投稿と音声動画の違いもお楽しみください。

恐怖の再来

大学生活も後半に差し掛かったある日、再び恐怖体験に見舞われた。

視世陽木
視世陽木

原付が壊れやがった……

大学構内の駐輪場、うんともすんともいわない原付の前で立ち尽くした。

たまたま仕事が休みだった親に迎えに来てもらい、途中でバイク屋に立ち寄る。
中古の原付を都合してくれるよう依頼し、動かない原付の引き取りから廃車処理までお願いした。

しかし依頼したからとすぐすぐ都合がつくわけでもないので、久しぶりとなるバス通学を余儀なくされた。

翌朝、時間通りにやってきたバスに乗り込んだ。

大学生活も後半、卒業に足る単位はほとんど取得済み。
受けるべき講義数も少なく、毎日のように大学へ通うことはなくなっていた。

そんな穏やかな日々の連続で、あの恐怖をすっかり忘れてしまっていたのだ。

大学入学時と同じようにぼんやりと車窓の外を眺めていた。
そして次の停留所が見えてくると同時に、恐怖の記憶がフラッシュバックした。

視世陽木
視世陽木

なんで、いるんだ……?

プシューと音を立ててバスは停車し、後方のドアが開く。
ガヤガヤと乗り込んでくる乗客。
その中の足音の1つが、ゆっくりと近づいてくる。

足音の主は私の隣に静かに腰を下ろした。

視世陽木
視世陽木

怖い怖い怖い怖い……

心臓は高鳴り、ひたすら「怖い」の2文字が頭を支配した。

チラリと一瞬確認した先にいたのは、まぎれもなくあの日の女性だった。

ただひたすら前を向いて座るだけの美しい女性。
だが女性の美しささえも、私を震え上がらせる要因となっていた。

異なる状況

視世陽木
視世陽木

落ち着け、落ち着くんだ……

こっそり深呼吸をしながら、自分自身を落ち着かせる。

毎回隣に座るという行為は奇妙であり恐怖なのは間違いないが、それ以外は何の害もない。
危害を加えられることはおろか、触れられたり話しかけられたりすることはなく、こちらを見ることすらしないのだ。

視世陽木
視世陽木

昔みたいにやり過ごせば大丈夫だ……

冷静に彼女の無害さを反芻させると、少し心が落ち着いてきた。
あとはただひたすら、車窓の外の無垢な景色に心を溶け込ませるだけだ。

しかしすぐ、数年前とは異なることが起きる。

……すね。………か?

小さな声が聞こえてきた。
最初は空耳かと思ったが、蚊の鳴くような小さな声が隣から聞こえてくる

以前とは違う彼女の行動に少しずつ胸が騒がしくなった。

……すね。お………か?

しばらくしても隣からの声は止まなかった。

授業中に生徒がコソコソおしゃべりしているような、本人は気を遣っているつもりだけど周りには耳障りな、そんな声。
隣の私にしか聞こえてないであろう声量は、遠慮がちに電話で話しているような声だった。

初めは恐怖していたのだが、不思議なもので次第にイライラへと変わった。

ラッシュの時間帯ではなかったが、バスの中にはちらほら乗客の姿がある。
自分から電話をかけたなら論外だし、かかってきた電話だとしても「後でかけなおします」とでも言って早々に切るのがマナーだ。

視世陽木
視世陽木

もう無理、限界!

周りの乗客はまったく反応していないので、やはり私にしか聞こえてなかったのだろう。
ぼそぼそとした声に我慢できなくなり、やんわりと注意しようと決意した。

意を決して視線を向けた私の目に入ってきたのは……。

最大の恐怖

視世陽木
視世陽木

誰と話してるんだ……?

注意しようと振り向いた先にいた彼女は、電話なんてしていなかった

お久しぶりですね。お元気でしたか?

お久しぶりですね。お元気でしたか?

お久しぶりですね。お元気でしたか?

お久しぶりですね。お元気でしたか?

お久しぶりですね。お元気でしたか?

お久しぶりですね。お元気でしたか?

お久しぶりですね。お元気でしたか?

お久しぶりですね。お元気でしたか?

お久しぶりですね。お元気でしたか?

お久しぶりですね。お元気でしたか?

お久しぶりですね。お元気でしたか?

お久しぶりですね。お元気でしたか?

お久しぶりですね。お元気でしたか?

お久しぶりですね。お元気でしたか?

お久しぶりですね。お元気でしたか?

お久しぶりですね。お元気でしたか?

行儀よく前を向いて座ったまま、視線を向けた私を見るわけでもなく呟いていた。

視世陽木
視世陽木

うわぁっ!!

思わず声を上げてしまったが、それでも彼女はこちらを見ようとしない。
ただひたすら、「お久しぶりですね。お元気でしたか?」と小さな声で呟き続けるだけ。

あまりの恐怖に、目的地はまだ先にも関わらず降車ボタンを押し、次の停留所で逃げるように降車した。

頑張って徒歩で大学へ向かったが、しばらくの間は恐怖で震えていたのを覚えている。

後日談

次の日からは、新しい原付がくるまでと言って近くの友人に送迎してもらったり、親に送迎してもらって急場を凌いだ。

ちなみに、友人の車で大学に向かう際も、親の送迎の際も、停留所に彼女の姿はなかった

どういう理屈かは未だにわからないが、私がバスに乗らない限りは彼女は姿を現さないのだ。
大学構内はもちろん、近所でも1度も彼女に遭遇したことがない。

それなのに彼女は私が乗車してくるのをどこかで待っていたのだ。

待っていなければ「お久しぶりですね」なんて言わないだろうし、「お元気でしたか」という気遣いはしないだろう。


それから私は、その不思議な女性について何度も何度も考察し、記憶を奥の奥まで辿ってみた。

様々な可能性や記憶の引き出しを開け、かなりの時間を費やして、ようやく1つの記憶に辿り着く。

しかし辿り着いた先に潜んでいたのも、私を震え上がらせるのに十分な恐怖だった。

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